外科的歯内療法

歯内療法外来の歯根端切除術

通常の根管治療を行える症例では,根管内からアプローチして感染源を除去するのが第一選択となります。しかし、最新の根管治療を行っても、全ての歯が治るとは限らないのが現状です。例えば、根尖孔外の感染やセメント質に感染が及んでいると,通常の根管治療では治らない症例があり,そのような場合には外科的歯内療法の適応となります。
外科的歯内療法の内、歯根端切除術の術式には、根尖切除術と意図的再植術の二つがあります。当歯内療法外来で行う外科的歯内療法はどちらもマイクロスコープを使用したmicrosurgeryで行います。microsurgeryで行う外科的歯内療法の成功率は90%を超えます。従来の肉眼で行っていた根尖切除術の成功率は 60~ 70%程度であるとの報告(#11-4)に比べ、有意に高いと言えます。

11) Mikkonen M,Kullaa-Mikkonen A,Kotilainen R.Clinical and radiologic re-examination ofapicoectomized teeth. Oral Surg Oral Med OralPathol 1983; 55: 302‒306.12) Frank AL,Glick DH,Patterson SS,Weine FS.Long-term evaluation of surgically placed amalgamfillings. J Endod 1992; 18: 391‒398.13) Grung B,Molven O,Halse A. Periapical surgeryin a Norwegian county hospital: follow-up findingsof 477 teeth. J Endod 1990; 16: 411‒417.14) Friedman S,Lustmann J,Shaharabany V.Treatment results of apical surgery in premolar and molar teeth. J Endod 1991; 17: 30‒33

歯内療法外来の外科的歯内療法について

  1. 外科的歯内療法の種類
  2. 歯根端切除術の適応症
  3. CTによる診断
  4. 根尖切除術の流れ
  5. 意図的再植術の流れ
  6. MTAセメントについて
  7. 動画
1)外科的歯内療法の種類

外科的歯内療法には広い意味で下記のように、複数の治療法がありますが、歯内療法専門医が最も必要とされる術式が、根尖切除術と意図的再植術であると言えます。

1.外科的排膿路の確保(切開)

2.根尖切除術

3.歯根切断法(ルートリセクション)

4.ヘミセクション

5.歯根分離法(ルートセパレーション)

6.再植術(脱臼等)

7.意図的再植術

8.歯の移植

9.歯内骨内インプラント

2)根尖切除術の適応症

1.最善で適切な根管治療を行ったにも関わらず、慢性的な症状あるいは瘻孔がある場合

2.通常の非外科的根管治療では、アプローチできない部位に問題があると予想される場合(根尖孔外の感染、セメント質に感染、過剰根管充填)

3.除去に伴うリスクが高いポストや、審美的補綴物が存在し、歯冠側からのアプローチを避けたい場合

3)CTによる診断

CTによる術前診断は根尖切除術を行うにあたり必要です。病変の広がりや、歯根の位置、重要な神経の走行によって、手術を行う範囲を変える必要があります。

4)根尖切除術の流れ

a.歯茎を切開し、根の先の炎症組織を見つけます。

b.根の先端を3mmほど切り、炎症組織を取り出します

c.根が短くなった状態

d.根の先端の根管をセメントで封鎖します(逆根管充填)

5)意図的再植術の流れ

A.歯を抜きます。

B.根の先端を3mmほど切り、同時に炎症組織を除去します。逆根管充填を行ないます。

C.元の抜歯窩に戻します。

 

意図的再植術は根尖切除術が困難な部位(側方の穿孔、第二大臼歯など)、あるいは歯根端切除術のリスクが高い場合(オトガイ孔、上顎洞に近いなど)に行なわれます。

6)MTA(エムティーエー)セメントについて

MTAセメントの特徴は、次のようなものです。
1.生体に害が少ない
2.封鎖性が高い
3.水分があっても固まる
4.PHが12.5あり、水酸化カルシウムの性質(硬組織誘導能)を有する

外科手術時には、出血が伴い、通常のセメントはなかなか固まりません。MTAセメントは水分で固まるセメントで、少量の血液が混じっても、硬化に支障をきたさないとされています。

7)動画

閲覧注意:動画には出血等が含まれます


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