治療が恐い方、歯科恐怖症の方にも対応
歯科治療は、不快感や恐怖心を抱く方が多くいらっしゃいます。精神鎮静法は、精神的・肉体的緊張を和らげ、リラックスした状態で快適な歯科治療を受けていただける治療法です。精神鎮静法には笑気ガスを吸入する笑気吸入鎮静法と薬剤を静脈から注入する静脈内鎮静法があります。
精神鎮静法
- 精神鎮静法とは
- 精神鎮静法の適応
- 笑気麻酔
- 静脈内麻酔
- 笑気麻酔と静脈内鎮静法の比較
1)精神鎮静法(せいしんちんせいほう)
患者の手術に対する不安や緊張といった精神的なストレスを、薬剤を使用して軽減する方法です。
2)精神鎮静法の適応
- 歯科診療に対する不安感・恐怖心の強い患者様。
- いわゆる神経質な患者様。
- 過去の歯科診療中の不快な体験(脳貧血様発作、神経性ショックなど)のある患者様。
- 心疾患、高血圧など、歯科診療時のストレスをできるだけ軽減すべき患者様。
- 嘔吐反射、絞扼反射が強く、歯科用器具(歯鏡など)、口腔内X線撮影、印象採得など、口腔内操作に支障のある患者様。
- 特に静脈内鎮静法の適応として、吸入鎮静法では対処できない鼻閉の患者、口呼吸の患者様、鼻マスクを拒否する患者様。
3)笑気麻酔(笑気吸入鎮静法)

笑気ガスは正式には「亜酸化窒素(N2O)」といいます。この笑気ガスを吸ったからといってゲラゲラ笑ってしまうような楽しい気分になるわけではなく、ガスを吸った患者さんがなんとなく引きつったような笑顔のような表情になることから「笑気ガス」と呼ばれるようになったそうです。歯科治療での笑気麻酔は、30%以下の低濃度笑気を70~80%の高濃度酸素と混ぜて使用します。笑気麻酔の場合、治療中も意識があり、医師との会話もできます。笑気ガスを鼻から吸引することで不安や恐怖心などを軽減させますが、後述する静脈内鎮静法と同様に、吸引中に意識がなくなることはありません。
治療中は笑気ガスを吸引し続けて、ボンヤリした状態を維持する必要があります。治療が終わると数分で笑気ガスが身体の外へ排出され、しばらく経つと完全に目覚めます。
4)静脈内麻酔(静脈内鎮静法)

静脈内鎮静法は、点滴によって腕の静脈から鎮静薬を注入することで不安や恐怖心、時間の感覚などが薄れた状態にする麻酔法です。これにより、患者さんはうっすらとした意識のなかで眠っているのとほぼ同じ状態になり、リラックスして治療を受けることができます。治療が終わった後も、治療中のことはほとんど覚えていません(健忘効果)。
静脈内沈静法によって処置中の不安や恐怖心を薄れた状態にするとともに、局所麻酔を併用することで痛みを取り除いた外科処置が可能になります。
5)笑気麻酔と静脈内麻酔の比較
笑気麻酔の長所
- 鎮静深度の調節性に富む
- 高濃度酸素を同時に吸入させることができる
- 健忘効果が期待できる
- 鎮静状態からの回復が早い
- 鎮痛効果がある
- 時間の感覚が鈍麻する
- 治療に対して協力的になり、容易に指示に従うようになる
- 副作用がほとんどない
- 術後管理が容易である
静脈内麻酔の長所
- 鎮静効果が確実
- 即効性
- 比較的深い鎮静状態が得られる
- 静脈路が確保されているので緊急時の薬剤投与が可能
- 器具、機材が簡便
- 種々の薬剤の長所を生かして投与できる
- 投与部位が静脈であるため歯科治療操作を制約しない
- 会話や口呼吸による鎮静深度への影響がない
- 手術室、診療室のガス汚染の心配がない
- 鼻マスクの装着、吸入ガスの臭い、ゴムの臭いなどをいやがる患者にも使用できる
- 健忘効果が期待できる
笑気麻酔の短所
- 鼻マスクにより手術部位が制約を受けることがある
- 会話や口呼吸により鎮静深度が影響される
- 体内に閉鎖腔疾患(イレウス、気胸など)がある場合には禁忌
- 過換気症候群患者に使用すると発作の発現をみることがある
- 手術室、診療室のガス汚染の心配がある
- 特殊な吸入鎮静器が必要である
静脈内麻酔の短所
- 鎮静深度の調節性が乏しい
- 投与量や投与速度により意識を消失することがある
- 使用薬剤により、鎮静状態からの回復に長時間を要する
- 静脈穿刺時に疼痛が伴う
- 使用薬剤により鎮痛作用が期待できない
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