歯内療法外来の歯髄保存治療歯内療法外来では、歯の神経の保存治療、すなわち歯髄保存治療を行っています。近年の様々な知見から、以前なら抜髄治療になっていた歯の歯髄保存治療が可能になりました。 歯内療法外来の歯髄保存治療について
1)暫間的間接覆髄法(ざんかんてきかんせつふくずいほう)露髄 の危険性 のある 深在性 う蝕に対して ,感染歯質を一層残 して暫間的 に覆髄を行い,炎症歯髄の殺菌 ・消毒とう 蝕象牙質直下に修復象牙質の形成 を促す方法です。
虫歯を全部取ると、歯の神経が露出してしまい、抜髄を余儀なくされる事が想定される場合に、虫歯を一部残します。歯髄には象牙質を作るという作用があります。これが虫歯菌に対する抵抗力になるのです。残った虫歯が歯を溶かすのに対し、歯髄は歯を作って抵抗します。 歯内療法外来では、暫間的間接覆髄法に3MIX(スリーミックス)という抗生物質の3種混合剤を使用します。 ・Metronidazol(MN :メトロニダゾール) ・Minocycline (MINO:ミノサイクリン) ・Cyprofloxacin(CPFX:シプロフロキサシン)です。 Metoronidazoleは深部う蝕象牙質中に多く存在する偏性嫌気性菌に、MinocyclineとCiprofloxacinは通性嫌気性菌や好気性菌に対して有効です。薬剤を、患部に効率よく行き届かせるため、マクロゴールとプロピレングリコールを基剤として使用する方法もあります。 この3種の抗菌剤で、口腔病巣に侵入している全ての細菌を殺菌できるとされています。 2)間接覆髄法う蝕の除去 や窩洞形成などによって残存歯質が菲薄化 した場合に,保護層 を作って外来刺激の遮断と第三象牙質の形成を促す方法です。
虫歯が全部取り切れて、かつ歯の神経が露出しないケースです。通常の虫歯治療として治療を完了する場合もありますが、こういったケースでも、時間の経過と共に歯髄が壊死してしまう場合もあり、歯内療法外来では、間接覆髄法にMTAセメントを使用します。
3)直接覆髄法窩洞形成あるいは外傷 などによって露髄(ろずい) した場合 に,露髄面 を直接被覆して歯髄の保護と創傷治癒(被蓋硬組織形成)を図る方法です。
直接覆髄法は、虫歯治療などによって、歯の神経が露出するケースでも使用されます。歯の神経が露出することを専門用語では露髄(ろずい)といいます。歯内療法外来では、直接覆髄法にMTAセメントを使用します。
4)歯髄部分切断法(生活歯髄切断法)、あるいは断髄法歯髄炎は不可逆性の疾患と言われており、歯髄炎の治療は歯髄全部除去療法、つまり抜髄が唯一の治療法でした。しかし、最近になって。感染歯髄だけ取り除く、歯髄部分切断法(生活歯髄切断法)の成功が報告されるようになりました。歯内療法外来では、歯髄部分切断法にMTAセメントを使用します。 5)歯髄血管再生療法-パルプ・リバスクラリゼーション根未完成歯が歯髄炎もしくは歯髄壊死を起こした場合に、根部歯髄が失活していたとしても,若年者であれば歯髄の再生を期待するというパルプ・リバスクラリゼーション(pulp revascularization,pulp regeneration)の術式が注目をされています。この術式は若年者の根未完成歯に限定されます。歯内療法外来では、歯髄血管再生療法にMTAセメントを使用します。 MTA(エムティーエー)セメントについてMTAセメントの特徴は、次のようなものです。 露髄時には、水分が出てきてしまい、通常のセメントはなかなか固まりません。MTAセメントは水分で固まるセメントで、更に歯髄に対して象牙質を作るように作用します。直接覆髄に最良の材料と言えます。 「歯の神経(歯髄:しずい)はできるだけ保存すべきです。」歯の神経を取ることにより歯の寿命が縮まってしまいます。 もう1つ、それは根管治療のリスクです。歯の神経を取る治療を抜髄治療(根管治療の1種)と言いますが、抜髄治療の成功率は90パーセント程度というデータがあります。この抜髄治療にはリスクがあるのです。 根管治療中に、歯に穴があいてしまったり、治療器具が歯の中に折れ込んで取れなくなる事があります。こういった治療のミスや偶発事故が抜髄治療、根管治療には起こりやすい。 抜髄治療が終わっても、痛みが続いてしまう事がある。その痛みに長期に渡り悩まされるケースもあります。 そういった事から歯科の世界には「歯髄は最良の根管充填材」という格言があります。歯の神経を残す治療に勝る抜髄治療はないという意味です。
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